先週、大変ありがたいことに、顧客企業のプロジェクト担当者から「御社の法務はすごいですね」と褒めていただいた。
上司や同僚からほめられるのもうれしい。だけど、顧客企業からほめられるともっと嬉しい。事業にダイレクトに貢献している実感を得られるからだ。
もちろん、自社と顧客企業とは理論的に利害が相反する。ただ、B to Bのビジネスではこういった単純な対立軸でとらえる必要ないと思ってます。これからの時代は「自社にも」「顧客企業にも」評価される法務を目指すべきなんではないか?という仮説を検討してみたい。
顧客企業から褒められたのはなぜか?
今回、褒めていただいた顧客企業は当社のインフラ事業のパートナー(以後”K社”という)。
1年ほど前、K社との大型案件で提示された英文契約がちょっとワークしない中身だったので、スクラッチでゼロから作り直す感覚で手直しした。
K社は当社の重要パートナーであることは分かっていたので大幅に直すことに躊躇したことは否めない。一方、今後も同種案件が複数発生することが見込まれたため、このタイミングで大型な手直しをした方が良いと判断した。ただし、契約修正にあたっては当社のリスクをヘッジしつつも、双方にバランスがとれたフェアーな条件となるよう心掛けた。
大幅に手直ししたのでK社は抵抗してくるかと思ったら、微修正レベルであっさり受け入れてくれたので拍子抜けしたことを覚えている。
それから1年くらいたって、ひょんなことからたまたまK社のプロジェクト担当者とお会いする機会があり、冒頭のお褒めの言葉をいただいたのだ。
その担当者によると、実は当時、自社の社内でも法務部から「こんな契約書ではダメだ」とダメ出しを受けていたらしい。ただ、英文契約をどう直したらいいかわからず困っていたのだそうだ。そこに私から思いっきり手直しした契約がきたので修正後の契約をK社の法務にみせると「これならよろしい」と納得してくれたらしい。そればかりか、法務との間でこれをその後の同種案件のひな形としようということになり、以降の案件をスムーズに進めることが出来ているそうだ。
つまり、顧客企業から褒められた理由をまとめると、
- 双方にバランスがとれ、整理された契約を提案したこと
- プロジェクト関係者全員のコンセンサスを得るための手助けをしたこと
- プロジェクト推進のために役にたったこと
ということで、プロジェクトの推進に一役買ったことが評価された理由であると思う。
法務パーソンの価値とは何か
予防法務に携わる法務パーソンの一番の役割は、自社を法務リスクから守ること。
法務パーソンたるもの、自社のリスクをヘッジすることを追い求めれば良いという考えもあると思う。
実際、もし法務パーソンが自社の過大なリスクを見逃してプロジェクトを進め、そのスピードにより顧客からリスペクトを得たとしてもそれは職務放棄であろう。このあたりは、外観からは分からないところも多いので難しい。
ただ、個人的には、法務パーソンは、もっと事業のフロントでその専門的な価値を発揮すべきだと常々考えている。
プロジェクトを推進するためのアクセラレーターとしてバリューを発揮するというのも、一つの法務パーソンの形じゃないかと思った一週間でした。