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弁護士資格にとらわれず、好奇心の赴くままに

法務目線での企業分析のやりかた

 弁護士に限らず、就職、転職するには企業分析が必要です。ただ、採用する側の立場で候補者と面接してると「企業分析のやり方知らないのかな?」と思うことが少なくありません。

 修習生や弁護士は新卒での就職活動をした人が少ないからでしょう(私もそうでした)。ただ、コツさえつかめば簡単です。

 弁護士が顧問先を開拓するときでもこの手法は使えると思います。仕事を得るという意味では同じことですので。

企業分析って何のためにやるの?

 仕事を得るという観点では、企業分析のゴールは「その会社の法務の仕事内容につき自分なりの仮説をもつ」ことです。

 候補者が的を得た企業分析をしていれば、それだけで仕事できる推定が働きます。少なくてもその候補者は誰かに質問する前に自分で調べることができる力があることを証明しているからです。

 就職/転職活動をするときでも、顧問先を開拓するときでも、面談前には企業分析したほうがよいと思います。

 

 では、その会社の法務の仕事内容はどうやって調べればよいのでしょうか?。

 まずは公表されている情報で調べていくことになるでしょうが、ポイントは「調べる順番」です。最初は分かりやすいものからスタートして、徐々にファクトベースに移行していくのがコツです。

 たとえば上場企業であれば、以下のような順番で資料をみていくと良いと思います。

企業分析のやり方

マイナビで検索する

 マイナビは基本的には学生をターゲットにしているので、とにかくわかりやすい。さっと読める分量で事業概要を把握できます。マイナビからスタートして全体像を把握するとそのあとがスムーズです。

アニューアルレポート(Annual Report)

 これは年次報告書のことで、株主通信とかいろんな名前があります。上場企業が株主や金融機関、証券会社用に企業内容を説明する資料です。会社のホームぺージの「IR資料室」などから閲覧可能。

 この資料も一般の人向けに書かれてるのでわかりやすい。記載内容が自由なので、その会社がアピールしたいところ、重視しているところがよくわかります。

決信短信(決算説明会の資料)

 このあたりから、だんだん客観的なファクトに注目していきます。決算短信、できれば決算説明会の資料があればなお良し。事業セグメントごとの売上と利益に着目してみましょう。

 アニュアルレポートを読んだ印象とギャップを覚えるかもしれません。アニュアルレポートで強調している事業はまったく利益に貢献しておらず、利益のほとんどを地味な既存事業で稼いでるかもしれません。

 転職者目線ではついつい新規事業を注目しがちです。ただ、企業目線では稼いでいる既存事業をしっかり守り、成長させていく法務の仕事も大事です。いま稼いでいる事業はなんなのか、これから伸ばそうとしている事業はなんなのか、その両者は区別して理解したほうがいいと思います。

有価証券報告書

 有価証券報告書は金融庁の管理下にあるので、何を書くか(書かないか)について会社側の裁量が小さくなります。そのため、よりファクトに近い情報が得られます。

 法務の転職活動であれば「事業等のリスク」の欄は必読です。ここは、経営者が企業の経営成績や財務状態に影響を与えると認識している主要なリスクを書いている箇所ですので、法務の仕事に直結します(いままでどんな訴訟を抱えてきたのか推測できたりもします)。

令和2年度の有価証券報告書レビューの審査結果及びそれを踏まえた留意すべき事項

http://fsa.go.jp/news/r2/sonota/20210408.html

〇事業等のリスクの開示においては、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フ
ローの状況等に重要な影響を与える可能性があると経営者が認識している主要なリ
スクについて、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化
した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容、当該リスクへの対応策を記載す
るなど、具体的に記載することが求められている。
〇 また、リスクの重要性や経営方針・経営戦略等との関連性の程度を考慮して、分か
りやすく記載することも求められている。(上記資料より引用)

 本筋とそれますが、転職者目線では従業員の平均給与、平均年齢、平均勤続年数の記載も要チェック。エージェントがもってきた給与レンジと平均給与があまりにずれていたら警戒したほうがいいかもしれません。

ビジネス・フローを書き出してみる

 ここまできたら、事業セグメントごとにビジネスフロー(商流)を書き出してみるのがおすすめです。たとえば野球の球団を運営する会社の面接を受けるとします。

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球団の仕事経験はありません。妄想です。

 こうやって書き出してみると、

「球団経営の協力会社ってどんなところがあるのかな?」

「選手との契約ってそもそも法務が関与しているのかな?」

「公共性は強そうだけど、許認可とかあるのかな?」など、

 いろいろ疑問が浮かんできます。

 

 間違っているか合っているかは問題ではなく、こういった仮説をもって面接に行くことが大事だと思います。たぶん、話す内容がガラッと変わるはず。

イメージからファクトへ

 面接をうける前にその会社の採用サイトをチェックする人は多いと思います。それ自体は良いことです。ただ採用サイトは、学生受けを意識してるので、会社の全体像はみえません。

 企業が外に向けて発信しているイメージから分析をスタートするのは良いと思いますが、徐々にファクトに迫っていくというアプローチにすることでより深い仮説をもつことができます。また、そのような分析スキルは、そのまま法務の仕事に求められるスキルでもあります。

 まとめると、「企業分析はしたほうがお得だよ」「順番が大事」ということですね。    

 参考になれば幸いです。