企業法務をアーキテクトする

企業内弁護士を、楽しく、やり甲斐があり、報酬にも恵まれた職業とするために試行錯誤する研究ノートです

企業分析のやりかた(法務の転職)

現職にきて10年以上たちますが、その間やめようと思って何度か他社の面接を受けに行きました。何度も採用面接をこなしているうちに、企業分析のコツがつかめてきたので、記事にして紹介します。

採用側の立場で面接していても、企業分析してない人が多いように感じます。コツをつかめば簡単なので、ぜひやってみてください。

企業分析って何のためにやるの?

仕事を得るという観点でいえば、企業分析の目的は「その会社の法務部の仕事内容について自分なりの仮説をもつ」ことです。やってほしい仕事があるから募集しているわけで、それが何なんなのかを自分なりに深堀していく。まあ面接の場で聞いてしまっても良いと思うんだけど、ある程度仮説がないと話も弾まない。あと、そもそもその会社に行きたいのかどうか判断できない

では、どうやったら、その会社の法務部の仕事内容を深堀していけるのでしょうか?。個人的には「順番が大事」だと思います。徐々にファクトベースに移行していくのがコツです。たとえば上場企業であれば、以下のような順番で資料をみていきます。

企業分析のやり方

マイナビで検索する

マイナビって基本的には学生をターゲットにしているので、とにかく記載がわかりやすい。さっと読める分量で事業概要を把握できるので、マイナビからスタートして全体像を把握するとそのあとがスムーズです。

アニューアルレポート(Annual Report)

これは年次報告書のことで、株主通信とかいろんな名前があります。上場企業が株主や金融機関、証券会社用に企業内容を説明している資料です。会社のホームぺージのIR資料室などから閲覧可能。一般の人向けに書いてあるものなのでわかりやすい。記載内容が自由なので、その会社がアピールしたいところ、重視しているところがよくわかります。

決信短信(決算説明会の資料)

このあたりから、だんだん客観的なファクトに注目していきます。決算短信、できれば決算説明会の資料があればなお良し。事業セグメントごとの売上と利益に着目してみましょう。アニュアルレポートを読んだ印象とギャップを覚えるかもしれません。アニュアルレポートで強調している事業はまったく利益に貢献しておらず、利益のほとんどを地味な既存事業で稼いでることもよくあります。転職者目線ではついつい新規事業の方を注目しがちですけど、稼いでいる既存事業をしっかり守り、成長させていくための法務はそれ以上に大事だったりもします。いま稼いでいる事業はなんなのか、これから伸ばそうとしている事業はなんなのか、その両者は区別して理解したほうがいいと思います。

有価証券報告書

有価証券報告書は金融庁の管理下にあるので、何を書くか(書かないか)について会社側の裁量が小さい。そのため、よりファクトに近い情報が得られます。法務の転職活動であれば「事業等のリスク」の欄は必読です。ここは、経営者が企業の経営成績や財務状態に影響を与えると認識している主要なリスクを書いているところですので、法務の仕事に直結します(いままでどんな訴訟を抱えてきたのか推測できたりもします)。

令和2年度の有価証券報告書レビューの審査結果及びそれを踏まえた留意すべき事項

http://fsa.go.jp/news/r2/sonota/20210408.html

〇事業等のリスクの開示においては、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フ
ローの状況等に重要な影響を与える可能性があると経営者が認識している主要なリ
スクについて、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化
した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容、当該リスクへの対応策を記載す
るなど、具体的に記載することが求められている。
〇 また、リスクの重要性や経営方針・経営戦略等との関連性の程度を考慮して、分か
りやすく記載することも求められている。(上記資料より引用)

本筋とそれますが、転職者目線では従業員の平均給与、平均年齢、平均勤続年数の記載も要チェック。エージェントがもってきた給与レンジと平均給与があまりにずれていたら警戒したほうがいいかもしれません。

ビジネス・フローを書き出してみよう

ここまできたら、事業セグメントごとにビジネスフロー(商流)を書き出してみるのがおすすめです。たとえば野球の球団を運営する会社の面接を受けるとします。

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球団の仕事をした経験は全くありません。妄想です。

こうやって書き出してみると、「球団経営の協力会社ってどんなところがあるのかな?」「選手との契約ってそもそも法務が関与しているのかな?」「公共性は強そうだけど、許認可とかあるのかな?」など、いろいろ疑問が浮かんできます。

間違っているか合っているかは問題ではなく、こういった仮説をもって面接に行くことが大事だと思います。たぶん、話す内容がガラッと変わるはず。

イメージからファクトへ

面接をうけるとなると、その会社の採用サイトをチェックする人が多いと思います。ただ採用サイトは、学生受けが良いごく一面を強調しているので、会社の全体像はみえません。こういった企業が外に向けて発信しているイメージから分析をスタートするのは良いと思いますが、徐々にファクトに迫っていくというアプローチにすると、より深い仮説をもつことができます。「順番が大事」ということですね。参考になれば!