法務パーソンの学習帳

Be the lawyer-statesman. CLOを目指す企業内弁護士のブログ

若手法務パーソンがスキルを磨くにはどうすれば良いか?

若手法務パーソンの悩み

 法務パーソンの悩みの一つに「指導してくれる人がいない」ということがあります。  

 多くの日本企業の法務部は発展途上ですので、経験豊富で親切な上司がいるとは限りません。現実的には自分でスキルを磨いていく必要があります。

 ただ、法務パーソンが恵まれているのは、外部の弁護士と一緒に仕事をする機会があることです。多くの企業では分野ごとに依頼する弁護士を変えているので、その分野における一流弁護士と仕事をすることできます。

 そこで、法務パーソンがスキルを磨くためには「外部の法律事務所の弁護士から学ぶ」ことがおススメです。

 ただ、漫然と横から眺めているだけではダメで、手を動かさなければ身に付きません。そのため、多少の工夫が必要です。

 以下、この記事では、私が企業の法務部に転職したあとに実際にやってみた、外部弁護士との協働でスキルを磨く方法を紹介します。

外部の弁護士との協働でスキルを磨く

①アジェンダと議事録をつくる。

 私の場合、外部の弁護士と会議をする前には、誰に頼まれなくても必ずアジェンダ(相談事項メモ)を作成し、事前に弁護士に送付するようにしていました。

 そして、会議が終わったら、誰に頼まれなくても自ら議事録を作ります。その議事録は、関係者だけでなく弁護士に見てもらうと、なお勉強になります。

 議事録をつくると自分の理解が不十分なところが浮き彫りになります。理解が怪しいと思えば弁護士に電話して個別に教えてもらったりもしていました。

 相談メモと議事録を作ることで、外部弁護士の思考過程と自分の思考過程の差分が浮き彫りになります。その差分を認識することで成長の第一歩とすることができます。

②外部の弁護士の仕事の一部を担当させてもらう

 外部の弁護士の仕事の一部を担当することもおすすめです。

 私の場合は、外部弁護士に依頼する契約のファースト・ドラフトを担当させてもらうようお願いしていました。また、外部弁護士に依頼したM&Aのデューデリジェンスのチームに入れてもらって一部を担当させてもらったりもしました。

 

 外部の弁護士にとってはやり辛いと思います。だから、付き合いの深い法律事務所でなければ頼みづらいでしょう。私は上司にお願いし、付き合いの深い大手事務所のパートナーに協力していただきました。

 私のファーストドラフトやデューデリジェンスレポートは、大手事務所のシニアアソシエイトにボコボコに叩かれましたが大変勉強になりました。

 私が管理職になってからは、部下となった新人インハウスにもこのスキームを使わせていただきました。

 また、社内クライアント(営業部)に理解を得る必要もあります。なぜかというと、法律事務所の弁護士が法務パーソンの指導につかったコストが営業部にチャージされることになるからです。

 全社的にみれば、法務パーソンが成長することによってそのコストは回収できますけど、そのような目線で協力してくれる営業部であることが前提となります。

 このように周囲の方に「大目にみてもらう」必要があるので、この方法はせいぜい入社2~3年目まででしか使いにくいです。

 あと、年下のアソシエイトにボコボコに修正されても謙虚に受け止めるというのは当然の前提です。

③出向で来ている弁護士と組ませてもらう。

 より取り組みやすいのが、法律事務所から出向してきた弁護士と組むという方法です。若手が出向弁護士と組んで難易度の高い仕事に取り組めばで大いに成長できると思います。

 ここでありがちな失敗は、出向の外部弁護士に仕事を丸投げしてしまうというパターン。これではまったく実力がつきません。

 繰り返しとなりますが、手を動かさなければ実力はつきません。ファーストドラフトは当然自分でやるべきです。

 自らがまずは手を動かし、その出向弁護士にレビューしてもらう。そしてやり直す。そのプロセスをとることによって一気に実力がつきます。

 出向弁護士にとっては手間がかかるやり方なので、教えてもらう法務パーソンが謙虚であることはもちろん、上司からのフォローも必要だと思います。

④社内でつかうひな形、サンプルを作成する。

 社内でころがっている同種契約を集め、差分を比較し、その必要性を判断し、ひな形をつくり、サンプルを作成する。そして作ったサンプルは外部弁護士にレビューしてもらう。

 こういったひな形作成の仕事は基礎体力を養ううえで極めて有効です。

 この一連のプロセスを一人で取り組めば、ドラフティング・スキルが大幅に向上すること間違いなしです。

 サンプルを作る仕事は、積極的に拾いましょう。