企業法務をアーキテクトする

企業内弁護士を、楽しく、やり甲斐があり、報酬にも恵まれた職業とするために試行錯誤する研究ノートです

ホワイト法律事務所から企業内弁護士に転職した理由①

40代企業内弁護士のMです。「わたしが法律事務所から企業内弁護士に転身した理由」について2回にわけて記事を書こうと思います。

私は社会人経験なく弁護士になったので、企業よりも法律事務所が身近な存在でした。 そんな私がなぜ企業に転職したのか? 企業内弁護士というキャリアに興味がある人のご参考になれば幸いです。

ホワイト法律事務所でのイソ弁時代

大学卒業後、2浪して司法試験に合格した私は、地方都市の法律事務所の勤務弁護士としてキャリアをスタートしました。司法修習で出会う同僚があまりにも頭がキレキレなので、こんなモンスターみたいなやつらとは競争できないと思い、アットホームな地元の法律事務所でキャリアをスタートしたのです。

 

就職した法律事務所は私をいれて弁護士が4人。アットホームで家庭的な雰囲気。なんと新人の私にも半個室が与えられるという恵まれた環境でした。仕事もそこまで忙しくなく、個人で仕事を受けるのも自由。今思い返しても、まれにみるホワイト法律事務所でした。

 

仕事は、裁判とか交渉の代理がメイン。最初は怖かったけど、あっという間に慣れました。当たり前のように一人で裁判所に行き、一人で交渉を代理していました。冷静に考えると20代の若者が他人の人生を背負って仕事するなど狂気の沙汰です。しかし、毎日やってると良くも悪くも慣れます。不動産の訴訟や債権回収案件が多かったような気がします。

 

コネがなくても個人の仕事は順調に増えました。市役所とか弁護士会の相談会を担当すると、離婚とか相続とか破産とか刑事とか、そういった仕事をたくさん受任することができるからです。なんでも受けたので毎日夜中まで仕事する羽目になったものの、収入も貯金もぐんぐん伸びていきました。

将来への不安

一見順調な弁護士生活のなかで、しかし、次第に自分の将来に不安を感じるようになりました。交渉や裁判の仕事はこなせるようになったけど、これといって自分に特徴がない。また、より致命的なのは、交渉や裁判を離れてビジネスに直結するような相談となるとまったく役にたてない、という問題でした。

 

弁護士になって2年目、友人の紹介で初めての顧問先ができました。しかし、そこで自分の無力さを実感することになりました。

 

頼まれて毎月の経営会議出席するものの、ろくなアドバイスが出来ない。あまりにも社会経験に乏しく、引き出しから何も出てきません。

たまに発生する債権回収はうまく解決できる。ところが、ちょっとビジネスサイドに踏み込んだ相談になると極端にパフォーマンスが落ちます。

 

考えてみればあたりまえで、司法修習では裁判のやりかたしか教わっていません。弁護士になってからは毎日のように裁判や交渉に奔走しているだけです。企業のニーズに応えられるような社会経験などないのです。その場で勉強してなんとか対応するものの、焼石に水でした。

 

自分の人生を変えた本との出会い

 

どうにも自分の将来の展望が見いだせない、そんなとき、ある本に出合いました。

 

 

この本は「どうすればクライアントから選ばれるプロフェッショナルになれるのか」という分析をした本です。

 

プロフェッショナルのなかには、クライアントと長期的な関係を気づき、信頼されるアドバイザーとして重宝されている人がいる。その一方で、汎用品のように扱われ単発的な仕事しか与えられない人もいる。その違いはどこにあるのか?という疑問に答えた本です。

 

悩める新人弁護士にピッタリの本です。

 

この本のなかでは、実在する様々なプロフェショナルが登場します。

 

そのなかの一人にエリック・シルバーマンというニューヨークで働く弁護士がいます。ミルバンクという一流法律事務所で、エネルギー分野を専門に扱う弁護士です。

 

『シルバーマンや彼の事務所は、契約的な部分を担当するために依頼されるのであるが、彼の知識基盤はそれだけにとどまらなかった。この分野の企業そのもの、戦略、組織、エネルギー市場についてのエクスパートとなった。(選ばれるプロフェッショナル 43P)』

 

『彼らは次第に幅広いビジネスに関する助言を求めて、シルバーマンを活用するようになった。他の弁護士はクリアしなければいけない法律上の200項目といった障害ばかりを話したがる。シルバーマンが話すのは、可能性やほかの選択肢といったことで、制約についてではなかった。(選ばれるプロフェッショナル 43P)』

 

『クライアントを持つプロフェッショナルには、自身の専門領域より優先される「重要な仕事」があるのだ。「真にクライアントのためにすることをする」、これが何よりも優先される。クライアントの状況、文化、政治、業界をとりまく状況などを踏まえ、本当にクライアントになることを考え、アドバイスし、実行に移す。その文脈のなかで自身の専門性も発揮する (選ばれるプロフェッショナル 2P)』

 

その本に書かれているシルバーマンの姿は、私の頭のなかにある弁護士のイメージを完全に逸脱していました。弁護士というよりは、法律に精通したビジネス・プロフェショナルです。

 

「格好いい・・・自分もこんな仕事がしたい・・・・」 

 

素直に感銘をうけました。

 

顧問先を前に何をアドバイスしていいかわからず右往左往している自分とえらい違いです。今のまま裁判と交渉に追われて毎日を過ごしていてはだめだ、と漠然と、しかしはっきりと自覚するようになりました。

 

(続く)